2008年4月7日月曜日

2003年5月号「修羅の武蔵」


 今、何故か剣豪・宮本武蔵がブームだ。
親の愛情薄く育った武蔵は、自らの依って立つところが分らず、
孤独の闇をのたうちまわる様な青春だった。
やがて彼は、力こそ自らをの証すものと思いきわめ、
修羅=闘争の道に入ってゆく。強くなりたい。
俺が一番でなくてはならない。自分より強い者が居ることは許せない。
生涯六十余たびの闘いに無配を誇り、勝つためには手段を選ばない、
あくの強い武蔵の姿がある。私の嫌いなタイプだ。
ところが晩年の武蔵はだいぶ様子が違う。
闘わずに勝ちを得る。勝ちも負けもなく、
一切の執着から自由になった武蔵。
肥後熊本の霊巌洞で、かつて殺めてしまった人達の供養の日を送ったという。
よくぞ変わられた。人は変われるのだ。

*今と言うのは,例によってこの文を書いた2003年頃の事。

2008年4月6日日曜日

2005年3月号「友達の個展を観に行ったⅡ」


 今年もSさんの個展を観に行った。
親しい友人の精進の結果を目の当たりにすると、
とても気持ちの良い励みになる。「私も頑張るぞぉ」と、自然に思えてくるのだ。
会場で個展を観に来た、共通の友人に会えたりすることも、楽しみのひとつだ。
知った顔が次々に現れると、わくわくしてくる。
独身時代ならお定まり、大体この後皆で一杯やりに行くところだが、
今回は女房子供と一緒だから、記念写真を撮って、
お茶を頂いて、挨拶して帰った。
住まいのある駅に着いた時は、もう夕方で、
こうした日はこれから家に帰って、ご飯を作ったり、
その片づけをするというのが、すごく面倒くさくなっていて、
駅前の寿司屋でのり巻きを買ってすませた。
良い一日でした。

*彼女は毎年まめに展覧会を催していて、楽しみにしている。
私も毎年板橋きり絵展に出品している。今年も5月の中頃に開催だ。

2004年3月号「友達の個展を観に行った」


 親しい友人から個展の案内を頂いて、女房と一緒に観にいった。
場所は銀座の外れの裏通りである。
古びた雑居ビルに幾つもの画廊が入って居て、
その内の一つがSさんの個展会場だった。
葉書を片手に道をたずねている時から,何だかはしゃいでいた。
気分が良かった。ちょうどこの会場の近くに、
兄が働く会社があることに気づいて、誘いの電話をかけた。
暫くして、両手にお菓子と飲み物で一杯の袋を提げて、
兄が笑顔でやって来た。
会場はシンプルな白壁の内装で、とてもお洒落な空間だ。
Sさんの油絵がよく似合った。
Sさんの晴れの日の喜びが伝わってきて、嬉しかった。
兄が一緒に観てくれたことも嬉しかった。
絵も善し。出会いも善し。いい一日だった。

2008年4月5日土曜日

2008年5月号「しいたけ山」


 家で椎茸を栽培している。通販で椎茸の菌床を買った。
バケツを逆さに置いた様な形の菌床に、適当に穴の開いたポリ袋をかぶせ、
湿度を調節しておくと、一晩で可愛い椎茸がポコポコ生えてくる。
そのまま放って置くと、小さな椎茸がびっしりと生え過ぎて、
お互いに成長の邪魔になってしまうので、詰まって居る所は間引きをする。
その取り除いた奴も、夕飯のおかずにした。
普段店頭で見かける、充分開いてしまっている椎茸と違って
これはしめじ位の大きさで、そこを食べるのが、又面白いのだ。
そのうち残した椎茸も見る見る大きくなる。
我々だけで味わうのが勿体なくて、友人家族を招待した。
皆で見ている側から採って調理した。子供たちは大喜びだ。
皆さんも一度やってみては如何?

2008年4月2日水曜日

1996年7月号「キャンプ・ファイヤー」


 私たちは日常、都会の喧騒の中で、時間に追われ、
仕事に疲れ、人間関係に傷つき、あるいは為すべきことも見つからず、
暇を持て余し、虚しさの中で無表情になっていた
。しかし今夜、山奥のキャンプ場で、夜のしじまの中、
焚き火のおきの弾ける音を聞きながら、思いっきりお喋りをした。
冗談を言い大声で笑った。あの日常の中では見たことも無い
、彼の、彼女のこれが本当の顔なのだと思った。
「皆、言い顔してるなあ」
今日はぐっすり眠って、明日はその笑顔を、都会の仲間に持ち帰ってください。

2008年3月30日日曜日

2003年10月号「荒れる」


 連日熱帯夜が続き、眠りは浅く、疲れを持ち越したまま仕事に出掛ける。
夏休みは稼ぎ時だ。私達似顔絵描きの仕事は歩合制なので、
夏休みなど長期休暇のシーズンは、出来る限り頑張っておかないとならない。
一ヶ月で普段の月の2倍ほど稼いで、その余分を駄目な月に回すことで、
やっとこ暮らしているのだ。
暑くたって、子供が泣いたって、良く寝てなくたって、頑張る気でいたのだ。
ところがこの期に及んで、現場の上の方から場所を移れとかいってくる訳。
先方から指定された場所に入って見ると、オーマイガーッ!
ここにはお客様なんて来やしないのだ。
肝心要の稼ぎ時に、この仕打ちはないでしょう。
こっちは生活が掛かってるんですよ。憤懣やるかたないです。
*例によって、この文章は現在のものではありません。ご心配なく。

2008年3月29日土曜日

2005年6月号「あじさい見物」


 子供が生まれる以前のこと、
妻に誘われて、白山神社にあじさいの見物に行った。
境内がぐるりとあじさいの路に囲まれている。
記念に写真を撮ろうという事になったのだが、
大勢の見物客の中で、良い場所に陣取って、いつまでも動かない人達が居る。
何かと思って見ると、水彩画サークルの人らしく、熱心にスケッチして居るのだ。
それは良いけど、この人達は景色の良い場所を離れないので、
写真を撮りたい私達にとっては、すごく邪魔なのだ。
妻と二人で(どいてくれ光線)を発射するのだが、
この人達は私達の気配に、気づいて居るのか居ないのか、
全然動じないのだ。迷惑この上ない。
さりとてこれ以上のことは出来ず、私達は良い場所を探して移動したのだ。