2008年3月27日木曜日

2001年3月号「さてどうしたものか」


 暗い湖面を背後にたたずむ一人の男。
何か考え込んでいる風情だ。悪相である。
となれば悪巧みを練っている様に見えてくる。
奸計ををもって国を乗っ取ろうとしているのかも。
誰と誰が味方で、誰を陥れて、誰は利用してとか。実に嫌な奴である。
でもちょっと待てよ。暗い画面と悪相の男。
これだけの情報で、このように決めつけてよいのだろうか?
夜の湖畔で、遠く離れた故郷の家族のことを想っているのかもしれない。
悪政に耐え、この国を何とかしなければと、苦悩しているのかもしれない。
顔が恐いのは生まれつきかもしれないではないか。
我々は何と目先の印象だけで、簡単に物事を決めつけてしまうことか。
自分で描いたこの人物の設定、さてどうしたものか。

2008年3月26日水曜日

2001年5月号「海とカモメ」


 暖かくなってきた。たまには何処か一泊旅行がしたい。
似顔絵描きという職業柄、関東近郊の観光地に出掛けることはよくある。
でもそれは仕事で行くのであって、少しも観光気分に浸れるものではないのだ。
それでも以前、仙台での仕事の翌日に休みを取って、
松島で遊覧船に乗ったことがある。
甲板に上がって見物すると、船の後から何十羽というカモメが追いかけてきて、
なかなかの壮観である。観光客の投げる餌が目当てなのだ。
わざわざパンくずの撒き餌が一袋いくらで売っている。
手のひらに乗せたパンをカモメが飛びながら、
上手いこと咥えていくのは、とても愉快だ。
そんなことを思い出しながらこの絵を描いた。
結婚して2年になるが、新婚旅行はまだだ。
*この文は昔書いたもの。その後、新婚旅行には行きました。

2008年3月25日火曜日

1996年10月号「ちっぽけ劇場の朗読会」


 西荻窪の近くに人形劇公演を専らとする「ちっぽけ劇場」がある。
そこの稽古場で毎週木曜日の夜開かれる朗読会、「ことば塾」に通った。
皆さんに朗読の楽しみを披露しよう。
一、毎週一度,出掛けて行く時と場を持つということ。
一、人との関わりの場があること。一、大きな声を出すこと。
一、長くやっていると呼吸が整ってくること。
一、人前で話す勇気が培われること。
一、自分の朗読で人が感動してくれる喜びがあること。
一、書店で朗読のために本を探す楽しみがあること。
一、必然的に本を沢山読むようになり心が豊かになること。
皆さんもやってみませんか。
*12年も前の文です。この劇場が今もやっているかどうか分りません。

2008年3月23日日曜日

2005年10月号「リアルビジョン」


 最近こんな仕事がしたいと思っている。
日頃からテレビの旅行番組を好んで見ている。
タレントが地方に出掛けて、美味しいものを食べたり呑んだりするのを観るのが好きなのだ。
自分がしたいと思っていることを、テレビの中でタレントがやっている。
それを観て追体験しているのだ。
それでしたい仕事と言うのは、料理や旅行雑誌の依頼で地方に行き、
旅先の風景やら料理、出会った人の似顔絵等を切り絵で描き、
紀行文を添えるのだ。大好きな旅番組の出版メディア版と言ったところか。
また美味しくて有名な飯屋や居酒屋を訪ねて、
同じような趣向で頁を作るのだ。これが出来たら最高に楽しいと思うのだ。
さあやるぞーっ。そのために心の世界、創造の大地にしっかり根を張るんだ。

2008年3月21日金曜日

2000年7月号「諸葛孔明」


 中国の歴史小説「三国志」のなかで最も人気がある、
と言っても過言ではないであろう諸葛孔明。
劉備玄徳の軍師であり戦略家として今日でも評価が高い。
生涯変わることなく理想を求め、ひたすら努力をし続けて生きた孔明は、
自らを振り返ってこう言っている。
「私の才能は少ないのに、危険を冒さないで天下を定めようとすることは、
不可能であります。私はひたすら死力を尽くすだけで、
勝つか負けるかを予測など出来ません」
何と謙虚でひたむきな生き方なのだろう。
私はこうした先人の話を聞いて、どうしても自分の現在の生活を
、考え直さないわけにはいかない心境になってしまう。
「人生の使命と目的のために、まず目標を定め、
それに向かって失敗を恐れずに、一歩前に出るのだ」

2008年3月19日水曜日

2002年8月号「滝沢馬琴」


 江戸時代後期の戯作者。旗本用人の家に生まれる。
24歳で山東京伝を訪ね入門する。
「椿説弓張月」をはじめ、数多くの読本を発表し、
当時の小説界にその地位を確立する。
その頃は今で言う印税制度はなく、原稿は買い取り制で、
後で本がいくら売れても作者の収入が増えるという事はなかった。
有名作家でありながら、生活は苦しく、様々な副業をこなしていた。
48歳にして生涯のライフワーク大長編「南総里見八犬伝」に取り掛かり、
完成までに28年をかけている。
このような破天荒な伝奇物を書きながら、
自らは武士の家柄にこだわるような人で、
他人づきあいの下手な人だった。享年82歳。
私も似顔絵だけでは食えず、副業をしている。
他人づきあいも下手だ。

2008年3月18日火曜日

2005年7月号「温泉天国」


 温泉旅行がしたいなあ。家族3人でのんびりと、広いお風呂に浸かりたい。
飼い猫の光の世話を、猫好きの友人に頼んで、心置きなく出掛けるのだ。
子供が生まれる前に夫婦旅行をした、養老の滝温泉あたりが良いだろう。
旅館は料金が安くて、部屋はきれい。
旅館スタッフの暖かいもてなしを受け、出される料理はどれも美味しい。
温泉は広~い露天風呂がいいな。
夕食後にゆっくり入るとする。見上げれば満天の星だ。
思いっきり楽しんだ後の、心地よい疲れに、子供はぐっすりと眠ってしまう。
その後で妻と二人、水入らず、やっとくつろいで、
辛口の地酒をちびちびと遣りながら、肩の凝らない世間話でも、
時間を忘れてしてみたいのだ。ああ極楽、極楽。