2008年7月5日土曜日

1997年8月号「走れ跳べ仔馬」


 澄み切った夜空にまんまる満月。
丘の畑のその上を、風に乗って空を飛んだら、どんなに気持ちが良いだろう。
都会から離れているから、空気がきれいで、
夜なのに月の光で、景色がくっきり見えるんだ。
仔馬のひずめは宙を蹴って、パカパカと心地よい音色を響かせる。
仔馬の背中に乗っているのは、もちろん君であり私なんだ。
あたりには誰もいないから、ちょっと歌でも唄おうか。
「ゴホン、ゴホン、本日は晴天なり。17番、唄います」
始めはためらいがちに、その内大胆に、
大声を張り上げて、思いっきり歌って笑った。
真夏の夜の、君と私の観た夢の話。

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