2008年3月2日日曜日

2008年4月号「池波正太郎」


 私が未だ鬱病の闇の中でもがいていた頃、
友人のK君に「どうすればこの苦しみから自由になれるのか分らない。
何か拠り所になるようなものが欲しい。
何かあったら教えてくれ」と聞いてみた。
彼は池波正太郎を薦めてくれて、その訳を「思い遣りかな」と言った。
池波の描く時代劇の世界、人と人の間には暖かい人情が通っていた。
そこのところが私に何かを与えてくれるかもと。
早速、何冊か池波作品を読んでみた。
「剣客商売」が特に気に入って、シリーズを全部読んでしまった。
そして一年ほどたった頃、電車の中で読んでいた時、
はからずも涙が溢れてきた。発病以来この方、涙なぞ涸れていたのに。
小説に込められた他人を思い遣る気持ちに、
ゆっくりと癒されていたのだ。回復の始まりだ。

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