2008年5月9日金曜日

1999年3月号「父」


 ついこの間のことだ.銭湯でカランの前に座って、何気なく目の前の鏡を見て驚いた。
「お父さん」と思わずつぶやいてしまうほど、そこに映された私の顔は、
亡くなった父親に似ていたのだ。
戯れに頭に少し水をかけて、指で髪をかきあげ、オールバックにしてみた。
まるで瓜二つだ。なんだか変な気分だった。
「やっぱり私は親父の血をひいているんだな」と「私も齢をとったな」との、
二つの思いが同時によぎった。
シナリオ作家の父に憧れとコンプレックスを抱きながら、漫画家を目指した青春だった。
そして挫折。フリーター、病院、入院、社会復帰。
「色々あったけど、今は似顔絵描きでなんとか生きています。
来月結婚します。お父さん有難う」
*例によってこの文は昔に書いたものです。来月結婚するわけではありませんから、
お間違えなきように。

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