2008年5月30日金曜日

1997年10月号「太宰治」


 自らの人生を人間失格と決めつけ、アイデンティティーの危機を、
乗り越えることが出来ぬまま終わってしまった太宰治。
もし彼がその人生の中で、確たる自分の存在意義を見つけることができたら、
人や社会、自然や宇宙との絆を実感する瞬間を持てていたら。
まったく違う後半を迎えていただろうに。なんだか切なくなります。
何故なら彼のはかなさは、私達の中にもあるし、彼の頼りなげな友情や、
結べない信頼関係は、そっくり私達も抱えているものだから。
だから魅かれるし、哀しいまでの共感を感じてしまうんだと思います。
でも我々は生きよう。信じよう。人間を愛し、何度転んでも自分の弱さと闘い続けていこう。
かならず生きてて良かったと、心底から思える日が来ますから。

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